山女(ヤマメ)。
この魚に特別な思いを寄せているアングラーは多い。
その可憐な美しさは渓流の女王と呼ぶにふさわしいであろう、渓魚である。
私自身、もっぱら湖や大海原に巨魚を求め彷徨った期間が私の釣り人生の大半であり、
たしなみ程度に渓魚を釣った経験をあるもの、
ヤマメを求めて渓流を歩くということは皆無であり、正直、想像すらしなかった。
しかしながら、いつからだろうか「ヤマメ」というこの渓流の美女に魅せられ始め、
とうとう自身でロッドまで作る熱の入り様になったのは、今年の春。
きっかけは、あるショップの店長さんの釣行記と美しい写真、
そして毎年送られてくるテスター鹿志村氏の釣行記だった。
その美しい容姿と彩りは今まで私が釣った魚とは別のものであり、
遂には完全にヤマメの魅惑の虜になっていた。
この二つのきっかけ(悪魔の誘い)に完全に私の心は彼女に向き、
さながら初めてデートに向かう青年のようにいそいそと準備を始める自分に、
ちょっとおかしくも懐かしい雰囲気を楽しんだ。今年の6月下旬のことである。
ロッドはClass2-4をアレンジし、より操作性とキャスタビリティを考慮してデザインを施してみた。
長さは5’8’’。
本流も考慮し、可能な範疇で取り回しと遠投性能を両立させた。
そしてこのロッドの仮称を「Class2-4 ストリームエディション」と名づけた。
完全に自己満足の世界ではあるが。。。
ルアーは、実績のあるものをできる限り多く試したいという思いから、
そしてエキスパートアングラーからも評価の高いショップ
可能な限りの種類を取り揃えてみた。
正直、今回のヤマメ釣行は管理釣り場を除けば実に15年ぶり。
しかも、その時の釣行はヤマメを狙うというよりも
「単純に渓流でルアーを投げたらヤマメが釣れた」程度のレベルであり、
渓流でのルアーフィッシングの真似事をした程度。
当然、そんな私にヤマメが振り向いてくれるはずもないと考え、
ここはひとつ、アングラーとして、そして人間としても尊敬するテスター鹿志村氏に指南役をお願いし、
多くの勉強を鹿志村氏に、渓流に、そしてヤマメにさせてもらおうというコンセプトを立てた。
しかし正直なところは‘思いを募らせる美女’を確実に落とす為の保険、
とさせていただいたのは秘密であるが。。。
15年以上ぶりに入る渓谷として選んだ(選んで戴いた?)のは、栃木県の那珂川。
到着して目にした水面を見て「水量は少し頼りないが、釣果はなんとか望めるのでは」と、鹿志村氏。
しかし素晴らしい景観である。
低気圧の影響からだろうか、うっすらと霧の掛かった川面にはカゲロウ他の水生昆虫が戯れ、
幻想的な雰囲気をかもし出している。
そんな景観をしっかりと楽しむ余裕のない自分が、少し可笑しい。
始めて女性を食事に誘い、その彼女を待ち合わせ場所で待ちながら、
彼女への第一声なんと掛けようか、
と考え右往左往して待っている青年の様であるからだ。
ルアーは何にしようか?どこへ投げればいいのだろう?動かし方は?
そんなことがめまぐるしく頭の中を交差する。
緊張と不安で御恥ずかしい話、キャストが決まらない。
しかしそんな私に同情してくれたのだろうか、彼女はすぐに姿を見せてくれた。
私はミノーが得意だ。
もちろん自己満足のレベルであり、人に誇れるものではないことを付け加えさせていただく。
よって私が持っている技術や経験で、彼女を口説き落とせる自信の持てるものはコレだけだと思い、
いくつかの口説き文句(ミノー)を並べた(キャストした)ときだった。
メトロトラウトmt:iをアップにキャスト、軽快なアクションを与えた時、
彼女は私に微笑んだ。
私にとって久しぶりのヤマメは、この川で生まれ育った艶やかで美しい個体だった。
私の手中に納まった彼女は、少しだけ忙しく呼吸を繰り返しながら、
私の手の中にその身を委ねていた。
少し小さめではあったが私にとっては十分すぎる、美しい女王が手中に横たわっていた。
今回ヤマメに、そして美しい渓谷に様々な勉強をさせていただたが、
メーカーの人間である以上タックルについても私なりに検証をしてみた。
渓流初心者のたわごと程度に聞いていただければ幸い。
あくまで私の主観、参考程度としていただけるのが健全(安全?)と感じるので、
御了承の上、御高覧戴きたい。
(ロッド)
今回はClass2-4のブランクをアレンジし、渓魚用にロッドを作成、
当日はこのロッドとClass2-4を使い分けての実釣を行った。
各ロッドの印象だが、
まずClass2-4を説明するとちょっとした広い川に入る場合は
意外にも常識を覆す6’6’’という長さが重宝することが理解できた。
常々、テスターの鹿志村氏が「遠投性」や「大型魚への順応性」といった
Class2-4の潜在能力を唱えておられるが、今回これをしっかりと体感した。
ただし小規模河川では短いロッドの独壇場であり、
ショートロッドの必要性は否定できないことを付け加えておきたい。
一方でショートロッドを考察すると、
通常ではミノーイングにはファーストアクションのロッドが有利と言われるが、
これは私個人の見識では疑問を感じる次第である。
操作性・キャスタビリティ・やりとりを考慮すると、
ベンディングカーブに違和感の残る急激なテーパーは、正直私は賛同できない。
バラシや正確なキャストが行いづらいからである。
フックアウトやラインブレイク、またはコントロールを重視したキャスティングでは、
圧倒的に美しい応力曲線を描くブランクに分があるように感じる次第である。
今回持ち込んだ私的試作のロッドは、Class2-4 譲りの美しいベンディングカーブで、
操作性は抜群のものであったことを紹介したい。
正直、個人的には開発を進めたいと感じた次第である。
(もちろん、予定は・・・御答えできない)
(ルアー)
今回、自信がミノーだけを用いた為、
ミノーのみの解説であることをお許しいただきたい。
まず結論から。
正直、私の実感では1回の釣行の中ででも、各ルアーの性能の差を痛いほど感じることができた。
私が使用した中で素晴らしいと感じたルアーは、
「メトロトラウト」と「レイチューン」(パフォーマンスレプリカ)そして「エゴイストリーフ」である。
動き(リトリーブ時/アクション時)、キャスタビリティ、
そして流れに対しての順応性のどれをとってもこの3つのルアーは秀逸。
メトロトラウトはmt:iとmt:iiの双方を適時使用したが、
用途に応じての明確な設計と動き、そして流れの中での安定感は素晴らしいものであり、
正直、完成度の高さに驚いた次第。
もちろん、トゥイッチやジャークを入れるとトリッキーに動くのだが、
どんな場所でもモデルごとの適正が合っていれば、
驚くほど軽快に魚を誘ってくれるのである。
比較的安価で入手もそれほど困難ではなく、そういった意味でも素晴らしいルアーである。
レイチューン パフォーマンスレプリカは今回、「5002RF」「4002MDS」の2種を使用したが、
まずは動きと操作性に脱帽した。
強い流れの中でもロッドの操作に従順に反応し誘い続けるレスポンスの良さ、美しいフィニッシュ、
そして、疑心暗鬼なヤマメにスイッチを入れる‘何か’。
さすがに秀逸なハンドメイドミノーを作成する方のプロダクトも出るだけに、
完成度はこちらも秀逸だった。
惜しむらくは入手が困難であることだが、努力してでも手に入れたい一品と感じた次第。
最後に「エゴイスト リーフ」。
このルアーの特徴は、
流れの中での泳ぎだしの速さとロッド操作によって生み出される特異なヒラウチアクション。
通常のミノーでたたかれた後でも、なにか期待をさせてくれるルアーと感じる。
いわば、和食に飽きた日本人へのフレンチやイタリアン、と言った表現だろうか。
また私の経験上、こういった動きのルアーは大型魚が好む傾向にある為、
ヤマメも然りか、是非とも確認してみたい。
(今回は私の技術がおろそかで、大型魚をキャッチできなかった)
ハンドメイドの為このルアーも入手は困難だが、見つけたら購入したい逸品である。
これ以外にも私が使用したルアーの中では良く出来たものがあったが、
「これ秀逸」と感じたものを紹介させていただいた。
(BOUZ Ring)
手前味噌で恐縮だが、BOUZリングについてもコメントしたい。
私が使用するプラグは、ほぼ100%BOUZリングに交換している。
理由は使用するプラグによって区々だが、ヤマメを初めとするトラウト用ルアーにも効果がある。
トラウト類の大半は‘くねる’ような暴れ方をする。
(特にランディング時や宙に浮かせた時に多い)
その際、通常の円形スプリットリングではフックが回転しづらく、結果としてバラシが発生しやすい。
が、BOUZリングは縦の長さが功を奏し、フック自体が通常のリングより回転する。
結果、トラウトの‘くねり’に対して追従性が良く、バレにくいのである。
百聞は一見にしかず、是非ともお試しいただきたい。
無論、フックの自由度が高い為にルアーの動きを妨げにくいというBOUZリングのもうひとつの特徴も、
繊細な小型ミノーには効果絶大であることも付け加えておきたい。
(ライン)
今回はバリバスの新しいPEライン「スーパートラウト アドバンス ダブルクロス」の8lbを使用してみた。
このラインの印象は「ナイロンの使用感のPE」という表現が最も適するのではないだろうか。
もちろん、さわり心地はナイロンではない。ちゃんとPEである。
ではなぜ「ナイロンの使用感」なのか?
それは‘しっかりとしたコシ’がこのラインにはある為、キャスティングトラブルがなく、捌き易い。
1度の使用で断言するのはいささか疑問だが、
このPEは、渓流で非常に使いやすいラインであることを明言したい。
その他の利点としては、
当然PEである為にナイロンと比較して破断強度が高く、
ちょっとした根がかりやキャストミスによるトラブルでも、大方ルアーが回収できること。
伸びが少ない為に小さなロッド操作でルアーを動かすことが出来る。
逆に弱点は、PEには相対的に言える点だが伸びない為にバラシの確立が増加する傾向がある。
特にヤマメの暴れ方は、私的にフックアウトしやすいと感じる。
バーブレスを常用する私には、
この点はナイロンに分があるように感じた。
ただし、ロッドを柔らかめにすることで対処できるということも付記しておきたい。
あとはナイロンかPEか、個人の主観にて選ぶべき。
あとがき
まずは今回協力していただいた「トラウトガレージ」の山本氏、
「Crazy Anglers Spot Lea Lea」の多田氏、
そして指南役をお願いした鹿志村氏にこの場をお借りして心から御礼を申し上げたい。
御三方の御協力によって、
今更ながらではあるが、渓流の素晴らしさとヤマメの素晴らしさの片鱗を知ることが出来た。
私の人生にとっての渓流フィッシングを、この日から始める事が出来た。
そしてヤマメに出会うことが出来た。
そんな私の小さく大きい感動が、
この駄文で少しでも読んでいただいた皆様に伝われば、
タックルに対する見識が皆様の参考になれば、
私としては嬉しい限りである。
もしも渓流での釣りに興味をお持ちいただいたならば、
そして渓流での釣りを志すのであれば私から皆様に、ふたつだけお願いをしたい。
この美しい渓流を少しでも長く維持する為に、
「ゴミを捨てない」「必要以上に魚を持ち帰らない」という協力をして戴きたいのである。
さすれば、この美しい渓流と女王達はいつまででも私達にその姿を見せ続けてくれるはずであるから。
BOUZプロダクション
吉川 信弘